現状復帰と原状回復の違いとは?退去費用で損しないための基本とトラブル回避術
賃貸の退去時は、敷金精算や修繕費の話が一気に出てきます。
そこで混同されやすいのが「現状復帰」と「原状回復」です。
似た言葉ですが、意味の軸が違うため、理解が曖昧だと請求内容に納得できず揉めがちです。
この記事では両者の意味と違い、費用負担の考え方、よくある誤解、トラブルを防ぐ実践ポイントまでまとめます。
目次
現状復帰とは

「現状復帰」は日常会話では便利な言葉ですが、賃貸の退去精算では意味がブレやすい点が注意です。
人によって「今の状態のままで返す」なのか「元の状態に戻す」なのか解釈が揺れます。
退去費用の説明でこの言葉が出たら、内容をそのまま受け取らず、どの範囲を誰が負担する話なのかを具体化することが大切です。
現状復帰は「今の状態に戻す」ニュアンスになりやすい
「現状復帰」は文字通りだと「現状(いまの状態)に戻す」と受け取りやすい言葉です。
ただ、賃貸の退去精算の場面では、この言い方は基準があいまいになりやすいのが難点です。
「現状回復」という表現も見かけますが、現状=現在の状態なので、賃貸借契約における言葉としては正確ではないと説明されています。
「現状復帰」と言われたら確認したいこと
管理会社や大家さんが「現状復帰でお願いします」と言うこともあります。
その場合は言葉だけで判断せず、次を確認すると安心です。
- 「原状回復のことですか?」
- 「借主負担はどの範囲ですか?」
- 「経年劣化や通常損耗は含みますか?」
- 「見積もりの明細は出ますか?」
似た言葉「原状復帰」も混同されがち
「原状復帰」は「原状回復」と同じ意味合いで使われることもありますが、建設業界では工事(作業)そのものを指す言い方として使われることが多い、と整理されています。
店舗やオフィスの退去で「原状復帰工事」という言葉が出るのはこのためです。
原状回復とは

原状回復は、賃貸の退去費用を考えるうえで中心になる考え方です。
とはいえ「入居当初の状態に100%戻す」と思い込むと、不要な負担まで受け入れてしまいます。
国のガイドラインでは、普通に暮らして生じる劣化と、借主の不注意で増えた損耗を分けて考える方針が示されています。
まずは「原状回復=全部戻すではない」という前提を押さえましょう。
原状回復は「借りた当時に完全に戻す」ではない
多くの人が最初に勘違いするのがここです。
原状回復は「入居した日の状態に100%戻す」ではありません。
国土交通省のガイドラインでは、原状回復を次のように定義しています。
「借主の居住・使用により発生した建物価値の減少のうち、借主の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」
つまり、ポイントはこうです。
- 借主の責任で増えた傷みだけが対象
- 普通に住んで自然に起きる古さや傷みは別扱い
「通常損耗」「経年変化」は原状回復に含めないのが基本
ガイドラインでは、原状回復の定義を示した上で、いわゆる経年変化や通常損耗の修繕費用は賃料に含まれる、という考え方を取っています。
イメージとしては次の通りです。
- 時間が経てば古くなる分 → 大家側の負担(家賃に含まれる考え方)
- 借主の不注意や乱暴な使い方で増えた分 → 借主負担
原状回復トラブルは「出口」ではなく「入口」から始まる
国土交通省は、原状回復の問題を「退去時(出口)」だけの問題として捉えるのではなく、入居時(入口)の確認が重要だとしています。
入居時点で「もともとの傷」を記録していないと、退去時に「あなたが付けた傷です」と言われても反論しづらくなります。
入居時(入口)の確認が重要
現状復帰と原状回復の違い

この2つの違いは「言葉の印象」ではなく、「判断基準があるかどうか」で整理すると迷いません。
賃貸の退去精算は、誰がどの費用を負担するかを決める作業です。
そのため、定義と線引きがある「原状回復」をベースに考えるのが安全です。
もし説明で「現状復帰」と言われても、原状回復の話なのかを確認し、負担区分を具体的に詰めるのがトラブル回避につながります。
違いは「基準があるか」「責任の線引きができるか」
一番大きい違いはここです。
賃貸の退去費用の話をするなら、原則は「原状回復」という枠組みで考えます。
- 現状復帰:言葉があいまいで、人によって意味がズレやすい
- 原状回復:ガイドラインで定義され、負担区分の考え方がある
覚え方は「AとB」で考える
国土交通省の資料では、損耗の考え方を「A」「B」などに分けて整理しています。
ざっくり言うと、こう考えると分かりやすいです。
- A:普通に住んでいても起きるもの(経年変化・通常損耗)
- B:住み方次第で起きたり起きなかったりするもの(借主の責任が問われやすい)
さらに、同じBでも「時間が経って価値が落ちている分」は差し引く、という考え方(経過年数の考慮)も示されています。
経過年数(住んだ年数)の考慮も重要
同じ損耗でも、時間が経てば設備や内装の価値は下がります。
ガイドラインでは、借主負担を考える際に建物や設備の経過年数を考慮し、年数が多いほど負担割合を減らす考え方を採用しています。
請求額を見るときは「年数の差し引きが入っているか」を必ず確認しましょう
原状回復費用で揉めやすい例

原状回復のトラブルは、特別なケースより「よくある生活の延長」で起きます。
壁紙の汚れ、床のへこみ、水回りのカビなど、誰の家でも起こり得るからこそ判断が割れます。
さらに「一部分の傷なのに全面張替え」など、工事の範囲が広がった瞬間に金額も上がり、納得感が下がります。ここでは揉めやすい典型例を押さえて、自分のケースに当てはめられるようにします。
借主負担になりやすい例
次のようなものは、借主の故意・過失などが疑われやすく、借主負担になりやすい代表例です。
- 物をぶつけたり落としたりしてできた床やドアのへこみ、キズ
- タバコのヤニ汚れや臭いが強い状態
- 掃除を怠ったことによるカビの発生、汚れの悪化
大家負担(通常損耗・経年劣化)になりやすい例
一方で、次のようなものは「通常の使用で自然に起きる劣化」として扱われやすい例です。
- 壁紙や床の日焼けによる色あせ
- 家具や家電を置いたことによる床のへこみ
- 画びょうによる小さな穴
「一部の修理のはずが全面張替え」問題
もう一つ、揉めやすい典型がこれです。
「傷は一部なのに、なぜ壁一面(または部屋全部)の張替え費用?」
国土交通省のガイドラインでは、基本はできるだけ最低限の施工単位で考える一方、色合わせ・模様合わせなどで「補修範囲にギャップが出る場合」の考え方も示しています。
つまり、全面張替えが常にダメというより、
- 「なぜその施工単位になるのか」
- 「経過年数は差し引かれているか」
をセットで確認するのが重要です。
トラブルを防ぐための考え方

退去費用のトラブルは、感情のぶつかり合いに見えて、実は「証拠不足」と「確認不足」で起きることがほとんどです。
国土交通省も、入退去時の物件状況の確認や、契約時の条件開示を重視しています。
つまり、対策は難しい交渉術よりも、入居時からの記録と、退去時の確認の積み重ねです。ここでは誰でもできる手順に落とし込みます。
入居時にやるべきこと
退去時の揉め事は、入居時点の準備でかなり減らせます。
国土交通省も、入退去時の物件確認を徹底することを重要ポイントとして挙げています。
入居時にやるべきことは次の通りです。
- スマホで部屋全体を撮影する(壁、床、天井、設備)
- 傷、汚れ、へこみはアップで撮る
- 撮影日が分かるように保存する
- チェックリストに記入して、できれば署名・押印まで取る
- 気になる点はメールなど記録に残る形で連絡する
ガイドラインでも、チェックリスト作成や写真などの「視覚的な手段」の活用が重要とされています。
退去前にやるべきこと
退去が決まったら、やることは「掃除」だけではありません。
精算で不利にならないためには、次の準備が効きます。
- 退去立会いの前に部屋の写真を撮る
- 契約書の「特約」を再確認する(クリーニング費、短期違約など)
- 設備の不具合があれば、退去前に管理会社へ申告しておく
- 請求は「内訳(明細)」を必ずもらう
退去立会いでの質問テンプレ
立会いの場では、遠慮せずに聞いて大丈夫です。
むしろ、聞かないと不利になりやすいです。
- この傷は「通常損耗」ではなく「借主負担」と判断する理由は何ですか?
- 修理の範囲はどこまでですか?(一部補修か全面か)
- 経過年数(住んだ年数)による差し引きはありますか?
- 見積書(単価と数量)が出ますか?
- 敷金精算はいつ、どういう書面で出ますか?
特約がある場合の注意
ガイドラインでは、特約で借主に通常より重い負担を求める場合、効力が問題になり得る点にも触れています。
借主に特別な負担を課す特約には、合理性や認識、合意が必要になる、という整理です。
だからこそ、契約時点で
- 「クリーニング費は定額か」
- 「どこまで借主負担なのか」
を確認する意味があります。
まとめ

「現状復帰」と「原状回復」は似ていますが、賃貸の退去費用で基準になるのは原状回復です。
原状回復は「借主の故意・過失などで増えた損耗だけを直す」という考え方で、経年劣化や通常損耗は家賃に含まれる、という整理が基本です。
そして、トラブルを防ぐ最大のコツは、退去時ではなく「入居時から記録を残す」ことです。
写真とチェックリストを味方にして、不要な請求に振り回されないようにしましょう。