Blog
2026.06.08
11:35

店舗の内装工事費用に使う勘定科目4つ|仕訳と耐用年数も解説

店舗内装工事の図面や見積書を確認する経営者

店舗の内装工事を行ったものの、「費用をどの勘定科目で処理すればいいのかわからない」「全額を経費にできるのか」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

内装工事費は原則として全額を一括経費にはできず、「建物」「建物附属設備」「工具器具備品」「消耗品費」の4つの勘定科目に分けて処理します。

金額や工事内容によって使う科目が異なり、耐用年数に応じた減価償却が必要なケースがほとんどです。

この記事では、店舗の内装工事費用に使う勘定科目の使い分け、金額別の判断基準、耐用年数と減価償却の計算方法、さらに具体的な仕訳例までわかりやすく解説します。

内装工事の費用は全額経費にできない

店舗の内装工事費用に使う勘定科目や耐用年数を解説する画像

店舗の内装工事費用は、支払った年度に全額を経費にできるわけではありません。

まずはその理由と基本的な考え方を確認しておきましょう。

結論

内装工事費は「資本的支出」にあたるため、支払時に全額を経費にはできません。耐用年数に応じて毎年少しずつ費用化する「減価償却」が必要です。

資本的支出と修繕費の違い

内装工事の費用が「資本的支出」と「修繕費」のどちらに該当するかによって、会計処理の方法が大きく変わります。

資本的支出とは、建物の価値を高めたり耐久性を増したりする工事への支出です。

新規の内装工事やデザイン変更を伴う改装は、原則として資本的支出に該当します。

資本的支出の場合は資産計上し、耐用年数にわたって減価償却を行います。

一方、修繕費は建物の現状維持や原状回復のための支出です。

壁紙の部分的な張り替えや設備の故障修理など、資産価値を高めない工事であれば修繕費として一括経費計上が可能です。

区分内容会計処理
資本的支出建物の価値を高める工事(新規内装・改装など)資産計上→減価償却
修繕費現状維持・原状回復の工事(部分修理など)一括経費計上

減価償却の基本的な仕組み

減価償却とは、時間の経過により価値が減少する資産の取得費用を、法定耐用年数にわたって分割で経費にする処理方法です。

たとえば内装工事に300万円かかり、耐用年数が15年の場合、毎年20万円ずつ経費として計上します。

一度に経費にはできませんが、長期間にわたって節税効果が得られるのがメリットです。

なお、法定耐用年数は国税庁の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められており、工事の内容や使用する勘定科目によって年数が異なります。

内装工事で使う4つの勘定科目

店舗内装工事で使う勘定科目を解説する画像

内装工事費は工事の内容や金額によって、使用する勘定科目が異なります。

まずは4つの科目の基本的な使い分けを押さえておきましょう。

ポイント
  • 建物:壁・天井・床など建物本体に固定される工事
  • 建物附属設備:電気・空調・給排水など建物に付随する設備工事
  • 工具器具備品:取り外し可能な10万円以上の設備・備品
  • 消耗品費:10万円未満または1年未満で消耗する物品

「建物」に該当する工事の具体例

建物に完全に固定され、取り外しができない部分の内装工事には「建物」の勘定科目を使用します。

建物の構造そのものに関わる工事が該当し、内装工事の中でも比較的大きな割合を占めることがあります。

  • 左官工事(壁の下地処理・仕上げ塗りなど)
  • 防水工事(厨房まわりの床防水など)
  • 塗装工事(壁面・天井の塗装仕上げ)
  • ガラス工事(ショーウィンドウ・間仕切りガラスの設置)
  • 軽鉄工事(壁や天井の骨組みの造作)

「建物」の法定耐用年数は構造によって異なり、鉄骨鉄筋コンクリート造で39〜50年、木造で22〜24年と長めに設定されています。

そのため、1年あたりの減価償却費は小さくなる傾向があります。

「建物附属設備」に該当する工事の具体例

建物附属設備は、建物に固着して機能する設備に関する工事で使う勘定科目です。

内装工事費の多くはこの「建物附属設備」に該当します。

  • 電気設備工事(照明・コンセント・スイッチの配線など)
  • 給排水設備工事(厨房やトイレの配管など)
  • 空調設備工事(天井埋込型エアコン・ダクトなど)
  • ガス設備工事(ガス管の引き込み・接続など)
  • 防災設備工事(スプリンクラー・火災報知器など)

建物附属設備の法定耐用年数は6〜15年と、「建物」に比べて短く設定されています。

そのぶん、1年あたりの減価償却費が大きくなり、早期に経費化できるメリットがあります。

設備の種類法定耐用年数
電気設備(照明含む)15年
給排水・ガス設備15年
冷暖房設備(空調)13年(ダクト式は15年)
消火・排煙・災害報知設備8年
エレベーター17年

「工具器具備品」に該当するものの具体例

工具器具備品は、建物に固定されておらず取り外しが可能な設備のうち、取得価額が10万円以上のものに使う勘定科目です。

  • 壁掛け型エアコン(取り外し可能なもの)
  • 可動式パーテーション
  • 業務用冷蔵庫・冷凍庫
  • レジスター・POSシステム

注意すべきは、同じエアコンでも天井埋込型は「建物附属設備」、壁掛け型は「工具器具備品」になる点です。

取り外しの可否が判断基準になるため、設備ごとに確認が必要です。

工具器具備品の耐用年数は種類により3〜8年程度と比較的短めです。

「消耗品費」で一括経費にできるケース

取得価額が10万円未満、または使用期間が1年未満で消耗する物品は「消耗品費」として処理し、取得時に全額を経費計上できます。

内装工事に関連するものとしては、以下が該当します。

  • 壁紙の部分的な張り替え(少額の場合)
  • 電球・蛍光灯の交換
  • 少額の塗装補修用材料

消耗品費は減価償却の必要がなく、支払った年度に全額を経費にできるため、会計処理がもっともシンプルです。

ただし10万円以上の場合は消耗品費にはできないので、金額の確認を忘れないようにしましょう。

金額別の会計処理の判断基準

内装工事費用の金額別会計処理を解説する画像

内装工事費の会計処理は、取得価額によって方法が変わります。

金額ごとの判断基準を確認しておくことで、処理ミスを防ぐことができます。

ポイント
  • 10万円未満→消耗品費で一括経費
  • 10万円以上20万円未満→一括償却資産として3年で均等償却
  • 30万円未満→少額減価償却資産の特例で一括経費(中小企業者等)
  • 30万円以上→通常の減価償却(耐用年数に応じて費用化)

10万円未満は一括経費計上できる

取得価額が10万円未満の内装工事費用や備品は、消耗品費として支払時に全額経費にできます。

減価償却の計算や固定資産台帳への登録も不要なため、もっとも手間のかからない処理方法です。

ただし、10万円未満かどうかの判定は経理方式によって異なります。

税抜経理方式なら税抜価額、税込経理方式なら税込価額で判断する点に注意しましょう。

10万円以上20万円未満は一括償却資産

取得価額が10万円以上20万円未満の場合、「一括償却資産」として3年間で均等に償却することが認められています。

この方法は資産の種類や耐用年数に関係なく、一律3年で費用化できるのが特徴です。

たとえば15万円の内装工事であれば、毎年5万円ずつ3年間で経費にできます。

固定資産税(償却資産税)の対象にもならないため、節税面でもメリットがあります。

30万円未満は少額減価償却資産の特例

資本金1億円以下の中小企業者等であれば、取得価額が30万円未満の資産について「少額減価償却資産の特例」を適用し、取得年度に全額を経費にできます。

この特例には年間の合計額が300万円までという上限がありますが、開業時に複数の少額工事が発生する場合には大きな節税効果を得られます。

なお、この特例は確定申告書への明細の添付が必要です。

30万円以上は通常の減価償却が必要

取得価額が30万円以上の内装工事費用は、原則として固定資産に計上し、法定耐用年数にわたって減価償却を行います。

特例の適用もないため、工事の内容に応じて適切な勘定科目と耐用年数を選ぶ必要があります。

店舗の内装工事は数百万円規模になることも多く、ほとんどのケースでこの通常の減価償却が適用されます。

見積書の明細をもとに、「建物」「建物附属設備」「工具器具備品」に正しく振り分けることが重要です。

内装工事の耐用年数と減価償却の計算

店舗内装工事の耐用年数と減価償却を解説する画像

内装工事費を資産計上した場合は、耐用年数に応じた減価償却が必要です。

自己所有と賃貸では扱いが異なるため、それぞれの計算方法を解説します。

補足

耐用年数は「自己所有物件」と「賃貸物件」で扱いが異なります。賃貸の場合は「合理的に見積もった年数」を使うケースがある点に注意しましょう。

自己所有と賃貸で異なる耐用年数

自己所有の建物に内装工事を行った場合は、建物本体の法定耐用年数に準じて減価償却を行います。

たとえば鉄筋コンクリート造の店舗なら耐用年数は39年、木造なら22年です。

一方、賃貸物件(テナント)に内装工事を行った場合は扱いが異なります。

国税庁の通達では、他人の建物に対する造作(内部造作)は、その造作の種類や材質、用途を考慮して「合理的に見積もった耐用年数」で償却するとされています。

参考元:国税庁 資本的支出と修繕費等

実務上は10〜15年の範囲で見積もるケースが一般的です。

なお、賃貸借契約に更新の定めがなく、有益費の請求や買取請求ができない場合には、賃借期間を耐用年数とすることも認められています。

定額法による減価償却の計算例

内装工事の減価償却は原則として定額法を使用します。

定額法は、取得価額を耐用年数で均等に割って毎年同額を費用計上する方法です。

計算式は以下のとおりです。

1年あたりの減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率

たとえば、賃貸テナントの内装工事に450万円かかり、耐用年数を15年と見積もった場合を考えます。

定額法の償却率は耐用年数15年で0.067です。

項目金額・数値
取得価額450万円
耐用年数15年
償却率(定額法)0.067
1年あたりの減価償却費約30万1,500円

年度の途中で工事が完了した場合は、使用開始月から月割りで計算します。

たとえば10月に使用を開始した場合、初年度は3か月分(10月〜12月)のみを計上します。

店舗内装工事の仕訳例3パターン

店舗内装工事の仕訳例を解説する画像

実際の工事内容をもとに、代表的な3つのケースで仕訳の具体例を紹介します。

見積書の明細をどのように振り分けるかの参考にしてください。

注意

仕訳は工事の見積書や請求書の明細をもとに、工事内容ごとに勘定科目を振り分けます。「内装工事一式」としか記載がない場合は、必ず業者に明細の内訳を確認しましょう。

新規店舗オープンに伴う内装工事

新規に店舗を開業するため、スケルトン物件の内装工事を行い、合計500万円を普通預金から支払ったケースです。

見積書の内訳は以下のとおりとします。

工事内容勘定科目金額
軽鉄・ボード・塗装工事建物200万円
電気設備・空調設備工事建物附属設備250万円
可動式パーテーション工具器具備品40万円
電球・清掃用品など消耗品費10万円

この場合の仕訳は次のようになります。

借方科目金額貸方科目金額
建物200万円普通預金500万円
建物附属設備250万円
工具器具備品40万円
消耗品費10万円

このように見積書の明細に沿って、工事の性質ごとに勘定科目を分けて仕訳することが正しい処理方法です。

既存店舗の改装工事の仕訳

既存の飲食店の内装を改装し、照明設備の入れ替えと壁紙の全面張り替えを行い、合計120万円を普通預金から支払ったケースです。

照明設備の入れ替え(80万円)は資本的支出に該当するため「建物附属設備」、壁紙の全面張り替え(40万円)はデザイン変更を伴うため「建物」として処理します。

借方科目金額貸方科目金額
建物附属設備80万円普通預金120万円
建物40万円

改装工事では「何が資本的支出で何が修繕費か」の判断がとくに重要です。

単なる壁紙の汚れ補修であれば修繕費として処理できますが、デザインや材質のグレードアップを伴う場合は資本的支出となります。

原状回復工事の仕訳

賃貸テナントの退去にあたり、原状回復工事を行い、80万円を普通預金から支払ったケースです。

原状回復工事は入居前の状態に戻す工事であり、建物の価値を高めるものではありません。

そのため、全額を「修繕費」として一括経費計上できます。

借方科目金額貸方科目金額
修繕費80万円普通預金80万円

ただし、退去時に原状回復以上のグレードアップ工事を同時に行った場合は、グレードアップ部分のみ資本的支出として資産計上が必要になるため注意しましょう。

会計処理で失敗しないための注意点

店舗内装工事の会計処理で注意すべきポイントを解説する画像

内装工事の会計処理では、見落としやすいポイントがいくつかあります。

税務上のリスクを防ぐために、事前に確認しておきましょう。

この節のまとめ
  • 見積書・請求書の明細を必ず取得して勘定科目を正確に振り分ける
  • 設計費や仮設工事費は工事項目に按分して計上する
  • 判断に迷ったら税理士に相談するのが安心

見積書の明細は必ず確認する

内装工事の見積書が「工事一式 ○○万円」としか記載されていないケースがあります。

しかし、勘定科目を正しく振り分けるためには、工事項目ごとの内訳金額が必要です。

内訳がないまま処理すると、税務調査で指摘を受けるリスクが高まります。

工事業者には必ず、工事の種類ごとに細かく分けた明細書を発行してもらいましょう。

設計費や諸経費の按分に注意する

内装工事では、設計費・仮設工事費・諸経費などの直接的に特定の勘定科目に紐づかない費用が発生します。

これらは各工事項目の金額比率に応じて按分し、それぞれの資産に配分して計上します。

たとえば設計費が30万円で、建物200万円・建物附属設備300万円の工事があった場合、設計費は2:3の比率で按分し、建物に12万円、建物附属設備に18万円を加算します。

判断に迷ったら税理士に相談する

内装工事の会計処理は、勘定科目の選定、資本的支出と修繕費の判断、耐用年数の見積もりなど、専門的な知識が求められる場面が多いのが実情です。

とくに賃貸物件の場合は耐用年数の見積もり方法が複雑で、誤った処理をすると過少申告加算税などのペナルティを受ける可能性もあります。

内装工事の規模が大きい場合や、処理方法に不安がある場合は、開業前の段階から税理士に相談しておくと安心です。

店舗内装工事の勘定科目に関するFAQ

店舗内装工事の勘定科目に関するよくある質問をまとめた画像

内装工事の会計処理に関して、よくある疑問をQ&A形式でまとめました。

判断に迷いやすいケースを中心に解説します。

Q

クロスの張り替え費用は修繕費と資本的支出のどちらになりますか?

A

汚れや傷みによる同グレードの張り替えであれば修繕費として一括経費計上できます。一方、デザイン変更や高品質な素材へのグレードアップを伴う場合は、資本的支出として資産計上が必要です。金額が20万円未満であれば、内容に関わらず修繕費として処理することも認められています。

Q

賃貸テナントの内装工事の耐用年数はどうやって決めますか?

A

賃貸物件に行った内装工事(内部造作)は、造作の種類・材質・用途などを考慮して「合理的に見積もった耐用年数」で償却します。実務上は10〜15年で設定するケースが多いです。賃借期間が限定されており、契約更新がない場合は、賃借期間を耐用年数とすることもできます。

Q

内装工事の減価償却は定率法でも計算できますか?

A

建物および建物附属設備の減価償却は、2016年4月1日以降に取得した資産については定額法のみが認められています。定率法は選択できないため、取得価額を耐用年数で均等割りする定額法で計算してください。

Q

内装工事の諸経費や設計料はどの勘定科目に入れますか?

A

設計料・仮設工事費・現場管理費などの諸経費は、特定の工事項目に直接紐づかないため、各工事の金額比率に応じて按分し、「建物」「建物附属設備」などそれぞれの資産に配分して計上します。

Q

居抜き物件を借りた場合の内装工事費用はどう処理しますか?

A

居抜き物件で追加の内装工事を行った場合も、工事内容に応じて「建物」「建物附属設備」「工具器具備品」に振り分け、通常どおり減価償却を行います。前テナントから引き継いだ設備の取得費用(造作譲渡代)も、内容ごとに勘定科目を分けて資産計上します。

店舗の内装工事費用と勘定科目のまとめ

店舗内装工事費用と勘定科目のポイントをまとめた画像

店舗の内装工事費用の会計処理は、勘定科目の選定から耐用年数の判断、減価償却の計算まで、多くのステップがあります。

もっとも大切なのは、工事の見積書や請求書の明細を正確に把握し、工事内容ごとに適切な勘定科目に振り分けることです。

この記事のまとめ
  • 内装工事費は原則として全額経費にはできず、減価償却が必要
  • 勘定科目は「建物」「建物附属設備」「工具器具備品」「消耗品費」の4つに分類
  • 10万円未満は一括経費、30万円未満は特例あり、30万円以上は通常の減価償却
  • 賃貸物件は「合理的に見積もった耐用年数」で償却する
  • 見積書の明細を必ず取得し、工事内容ごとに正しく仕訳する

とくに店舗の開業時は内装工事の金額が大きくなりやすく、処理を誤ると税務上のリスクにつながります。

「建物附属設備」は「建物」よりも耐用年数が短いため、正しく分類するだけで早期に経費化でき、節税効果を高められます。

会計処理に不安がある場合は、工事の計画段階から税理士に相談しておくことで、スムーズな確定申告につながります。

内装工事のプランニングや費用のご相談は、実績豊富な施工業者に早めに問い合わせておくとよいでしょう。

【監修者】松岡 祐希

株式会社オールメイク代表。

兵庫県を中心に全国各地の美容室・サロン・飲食店・病院・オフィス・クリニックなど店舗の内装工事をしています。 自社でも運営してる美容サロンなどもあるので、配置含めて設計図のパズルは得意になります。