店舗の原状回復トラブルを徹底解説|高額請求・敷金返還・指定業者問題の対処法と予防策
店舗の退去時に発生する「原状回復トラブル」は、経営者にとって大きなリスクです。
想定していなかった高額請求、敷金が返ってこない問題、オーナー指定業者との価格交渉など、事業用物件ならではの争いが起きやすい分野でもあります。
実は、こうしたトラブルの多くは「契約時」と「入居時」の対応で防ぐことが可能です。
この記事では、
- 店舗原状回復トラブルの原因
- よくある具体例と解決策
- 未然に防ぐための実践的な方法
をわかりやすく解説します。
退去を控えている方も、これから出店予定の方も、ぜひ最後までご覧ください。
目次
店舗の原状回復トラブルとは?まず押さえるべき基礎知識

店舗の原状回復トラブルは、退去時に突然発生するものではありません。多くの場合、契約内容の理解不足や事前確認の甘さが原因となっています。
住宅と異なり、事業用物件は契約自由の原則が強く働くため、特約の効力が大きい点も特徴です。
まずは、店舗特有の原状回復の考え方を理解することが重要です。
店舗の原状回復の定義と住宅との違い
店舗の原状回復とは、賃貸借契約終了時に物件を契約で定められた状態に戻すことを指します。
住宅の場合は「通常損耗は貸主負担」という考え方が浸透していますが、店舗では必ずしも当てはまりません。
特に注意すべき点は次の通りです。
- スケルトン返却が原則の物件が多い
- 内装や設備の撤去義務が広範囲
- 特約が優先されるケースが多い
契約書に「原状回復義務を負う」と記載があれば、その範囲は原則として借主が負担します。
住宅の感覚で判断してしまうと、想定外の費用負担につながります。まずは契約書の条文を丁寧に確認することが基本です。
原状回復トラブルが起きる主な原因
店舗の原状回復トラブルの本質は「認識のズレ」です。
入居時には問題にならなかった事項が、退去時に突然争点となります。
主な原因は以下の通りです。
- 契約条文の解釈違い
- 口頭説明のみでの合意
- 工事範囲の曖昧さ
- 経年劣化と損耗の線引き
とくに経年劣化については、住宅と違い、店舗では借主負担とされる特約がある場合があります。
契約書を十分に読み込まずに署名すると、退去時に高額請求を受ける可能性があります。契約段階からの慎重な確認が不可欠です。
スケルトン返しと居抜き返却で揉める理由
店舗物件では「スケルトン返し」が一般的です。
これは内装や設備をすべて撤去し、躯体のみの状態に戻すことを意味します。
しかし、実務では居抜きで次の借主が決まるケースもあります。よく揉めるポイントは次の通りです。
- 居抜き募集なのに全面解体を求められる
- 造作譲渡の合意が曖昧
- 設備の残置可否が不明確
居抜きで引き継げると思っていた設備が、実は撤去義務の対象だったという事例は少なくありません。
退去前に必ず書面で合意を取り、工事範囲を明確にしておくことが重要です。
店舗原状回復トラブルの具体例と対処法

実際のトラブル事例を知ることで、リスクを具体的に理解できます。
高額請求や敷金返還問題など、現場で起きやすいケースとその対処法を見ていきましょう。
高額な原状回復費用を請求されたケース
退去時に提示される見積もりが数百万円にのぼることも珍しくありません。
特に飲食店では、ダクトや厨房設備の撤去費用が高額になります。
高額請求の原因は次の通りです。
- 工事範囲が広く設定されている
- 指定業者の単価が高い
- 内訳が不透明
対処法としては、必ず見積もりの詳細内訳を確認することです。工事項目ごとに妥当性を精査し、必要に応じて専門家に相談しましょう。
交渉の余地があるケースも少なくありません。
オーナー指定業者を断れないと言われた場合
契約書に「貸主指定業者」とある場合でも、内容の妥当性まで無条件に従う義務があるとは限りません。
確認すべきポイントは以下です。
- 指定範囲は工事全体か一部か
- 価格決定の基準は明示されているか
- 相見積もりの可否
著しく不当な請求であれば、交渉や法的手段も検討可能です。感情的にならず、契約条文と見積書をもとに冷静に話し合うことが解決への近道です。
敷金が返ってこないトラブルの解決策
敷金は原状回復費用と相殺されることが多く、結果的にほとんど返金されないケースもあります。
対策として重要なのは次の点です。
- 入居時の写真保存
- 退去立会いの記録
- 精算書の詳細確認
明細が曖昧な場合は根拠資料の提示を求めましょう。内容証明の送付や専門家への相談で解決する場合もあります。
証拠があるかどうかが結果を大きく左右します。
店舗原状回復トラブルを未然に防ぐ方法

最も重要なのは、トラブルを「起こさない」ことです。契約前から退去時までの対応次第で、リスクは大きく変わります。
契約前に確認すべき重要ポイント
契約前の確認が不十分だと、退去時に争いが発生します。
必ず確認すべき事項は次の通りです。
- 原状回復の具体的範囲
- スケルトンの定義
- 設備の扱い
- 指定業者条項
条文が不明確な場合は質問し、可能であれば修正を依頼しましょう。
契約前の一手間が将来の安心につながります。
入居時にやるべき証拠保存
入居時の記録は、退去時の強力な証拠になります。
有効な方法は以下です。
- 室内全体の写真撮影
- 設備の状態記録
- 破損箇所の書面化
動画撮影も効果的です。日付が確認できる形で保存しておくことで、責任範囲の明確化に役立ちます。
退去時の正しい進め方と交渉術
退去時は事前準備がすべてです。
進め方の基本は次の通りです。
- 退去予告期間の確認
- 事前協議の実施
- 書面での最終合意
工事前に合意書を交わしておくことで、後からの追加請求を防ぎやすくなります。
交渉は契約条文と事実を軸に進めることが重要です。
店舗原状回復費用の相場と内訳

店舗の原状回復費用は、物件の広さや業種、契約条件によって大きく異なります。
小規模店舗でも数十万円、飲食店などでは数百万円単位になることも珍しくありません。
特にスケルトン返しが条件の場合、内装・設備・配管・ダクトなどの撤去が必要となり、費用が膨らみやすくなります。
ここでは、相場の目安と費用が決まる仕組みを詳しく解説します。
店舗原状回復の坪単価相場はいくら?業種別の目安
店舗原状回復費用は「坪単価」で語られることが多く、目安としては1坪あたり2万円〜8万円程度が一般的です
ただしこれは業種によって大きく差が出ます。
- 物販店:2万円〜4万円/坪
- 美容室・サロン:3万円〜6万円/坪
- 飲食店:5万円〜8万円/坪
- 重飲食店:7万円〜10万円以上/坪
例えば20坪の物販店なら約40万〜80万円、同じ広さの飲食店なら100万〜200万円程度になる可能性があります
厨房設備やダクトの有無で費用は大きく変動します。
あくまで目安であり、実際は現地調査後に確定しますが、退去前に概算を把握しておくことは資金計画上とても重要です。
スケルトン工事の費用内訳を詳しく解説
スケルトン返却の場合、単に壁紙を剥がすだけでは済みません。
内装材・設備・配線・配管など、借主が設置したものをすべて撤去する必要があります。
主な内訳は次の通りです。
- 内装解体工事:1坪あたり1万〜3万円
- 厨房設備撤去:20万〜100万円
- ダクト撤去:30万〜150万円
- 空調設備撤去:10万〜50万円
- 廃材処分費:10万〜30万円
例えば飲食店でダクトが屋上まで伸びている場合、足場費用が加算され、さらに50万〜100万円増えることもあります。
見積書では「一式」と書かれることが多いため、数量や範囲を必ず確認することが重要です。
解体費用が高額になるケースとは
原状回復費用が想定以上に高くなるケースには共通点があります。特に飲食店やクリニックは高額になりやすい傾向があります。
高額化する主な理由は以下です。
- コンクリート斫り工事が必要
- 給排水管の撤去距離が長い
- 防音工事をしている
- 天井裏配線が複雑
例えば床をコンクリートで嵩上げしている場合、撤去費用だけで50万〜100万円かかることもあります。
また、ビルの共用部分に関わる工事は管理組合指定の方法となり、費用が上乗せされるケースもあります。
事前に図面を確認し、どこまで撤去対象なのかを把握しておくことが重要です。
原状回復見積もりのチェックポイント
見積もりの金額が妥当かどうかを判断するには、内訳の精査が不可欠です。
合計金額だけを見て判断するのは危険です。
確認すべきポイントは次の通りです。
- 「一式」表記の内容
- 数量と単価の妥当性
- 足場費用の有無
- 廃材処分費の計算根拠
例えば「内装解体一式 150万円」と記載されている場合、坪数と単価を逆算すると適正かどうかが見えてきます。
相見積もりを取ることで、相場感を把握できます。指定業者しか使えない場合でも、内容確認と減額交渉は可能です。
追加費用が発生しやすい落とし穴
見積もり後に追加費用が発生するケースも少なくありません。
特に注意すべきなのは、解体後に発覚する隠れた工事です。
代表的な追加要因は以下です。
- 隠蔽配管の撤去
- アスベスト調査
- 想定外の躯体損傷
- 夜間工事指定
例えばアスベストが検出された場合、調査費用だけで10万〜30万円、除去費用で数十万円追加されることもあります。
契約前に「追加費用発生条件」を確認し、どの範囲までが当初見積もりに含まれているのかを明確にしておくことが重要です。
原状回復費用を安く抑える具体策
費用を抑えるには、事前準備と交渉が鍵になります。
単純に安い業者を選ぶだけでは不十分です。
実践的な方法は次の通りです。
- 相見積もりを2〜3社取る
- 居抜き譲渡を検討する
- オーナーと事前協議する
- 不要工事を精査する
例えば居抜きで次の借主が決まれば、解体費用が半分以下になることもあります。
また、オーナーと早期に相談することで、スケルトン返却義務を緩和できるケースもあります。
退去が決まったらすぐに動くことが、費用削減の最大のポイントです。
まとめ|店舗原状回復トラブルは契約前から始まっている

店舗の原状回復トラブルは、費用の大きさから深刻化しやすい問題です。
しかし、契約書の確認、入居時の証拠保存、退去前の事前協議を徹底することで、多くのリスクは回避できます。
退去時に慌てるのではなく、出店時から備えることが最も効果的な対策です。
原状回復は単なる解体工事ではなく、事業を守るための重要な経営判断といえます。